PRESIDENT BLOG

2023.02.13 経営のこと

変革と自己犠牲

日本経済が停滞しています。これは、日本企業がチャレンジをしていない、イノベーションを起こしていないということに起因しているというのは、もう何度か言っています。変化は、リスクのある行動です。それを避ける行動は組織のすべてに影響を与え、企業が年老いて最期の日を待つ方のようなメインタリティになってしまいます。そのような、諦め、自信を失うこと、組織に変革を求めないムードが漂っている状態、それを変えるというのは簡単ではありません。

私は、そういう組織を変革していくにあたり、最初に一番大事なことは何か?というと、リーダーの自己犠牲だと思っています。そんな今の時代に古いよと言われそうですが、組織を変革するという特殊なフェーズでのリーダーシップにそれは欠かせないと思います。

これは精神論ではないです。心理学です。組織を変化するには、大きなエネルギーがいります。それを成し遂げるには、組織のアイデンティティを高め集団としての一体感というのがいるんです。これは普段でもそうかもしれませんが、変革期は特にだと思います。

そのためにリーダーが自己犠牲をすること、社員は、そのことにより、リーダーのビジョンが口先だけでないというのを感じ、本気で信頼でき、従うべき価値があると理屈ではなく感覚で知るのです。それがないと、その言葉を疑ってしまうのです。簡単にいうと信念化ですね。その上で、ビジョンを語ることです。リーダーの自己犠牲が社員を集団へのアイデンティティを確立し次の段階でリーダーの持つビジョンを知ることで、社員が自分たちの将来を知り自分たちが、リーダーの理想の中で、いかに生きるべきかを知ります。

大変、小さい事例で恐縮ですが、私の経験をお話しさせていただくと、21年前に、父から究極の衰退事業を引き継いだ私は、廃業するか?リスクを承知でチャレンジするか?しか道がありませんでした。そして、チャレンジする道を選んだのですが、組織を生まれ変えさせないといけません。社長になって初年度大赤字だった私は、自分の報酬を大きく下げました。そして、今までの公私の区別が無茶苦茶になっていたものを自分もやめるからということで、社員にも納得してもらって公私の区別をしっかりしていきました。

仕入先も、一切の社長の関係の先というのを排除していきました。仕入先だけではないですね。恩人の方や得意先で株主でもある方も役割がはっきりしていなければ外部取締役を辞めていただきました。人にも恨まれてきたと思います。こういうことも自己犠牲の一つです。また、初期のころは、残念ですが、工場を閉めたので、何人かの社員には辞めてもらわざるをえませんでした。それも人任せにはしませんでした。自分で通達しました。

なぜ、そうしたか?今から思えば不思議ですが、恐らく、自分が社員だったら、リーダーが自ら、そうしてほしいだろうなということを実行していったのかもしれません。変革期の企業が反転するのは、戦略面などやビジネスモデルではありません。人間はそんなに合理的ではありません。変革期には、リーダーの自己犠牲が、最初のモデレーターなんです。それが組織変革の絶対的な必要条件だといっても過言ではないと私は思っています。

歴史をみても、昔おこなわれた変革もすべてがそうですし、最近のJALの変革の事例などをみても、稲盛さんの自己犠牲がスタートになっているので、それは変わってないなと思います。